はじめに
絵の具は筆やハケで塗る。児童や生徒にとっては、色鉛筆や色ペンを使うよりも、絵の具を上手に塗るのは難しいと感じることが多いだろう。
絵の具の上手な塗り方には大切なポイントがある。
絵の具の濃度、塗る順番、筆の使い方、の3つだ。
今回は、石というキャンバスに、アゲハ蝶を美しく丁寧に描く。制作手順とともに、上手に塗るためのコツについて紹介する。
ストーンアート第14回。
目次
石の色を活かす アゲハ蝶
今回は、まず石の色に注目した。黒っぽい色の石だ。
石の色を活かして「アゲハ蝶」という美しいモチーフ(素材)を思いつく。
また、凹凸が少なくすべすべしているので、羽の細かな模様を塗るのに適していそうだと考えた。
アゲハ蝶の、羽の黒い部分と黄色い部分との派手な配色を、ていねいな塗り方で鮮やかに表したい。
制作手順
1.資料を探す
蝶の羽の美しさを表現するためには、全体を上から見た姿を確認しておきたい。生体か標本があればなお良いが、今回は図鑑とインターネットで探した。
2.下描き
黒くてすべすべした、横幅10㎝程度の石に描く。
細かな筆使いのためには、石が小さすぎては描きにくい。
今回は、何とか蝶を描くことができる大きさの石だ。できるだけ大きく下描きした。
模様もしっかり筆で描く。
3.着色
きれいに塗るために、黄、赤、青の部分に色を入れてから最後に黒を入れる。
石の黒さを残す部分をつくりながら、模様をよく見て描く。
児童や生徒には、1枚の羽にいくつの模様(例えば黄色の部分)があるか数えてみるように指導すると良い。写実的な描写に近づくし、対象をじっくり見るきっかけになる。
石の色を残しながら、黒い羽の部分を着色する。また蝶の周りにも、影になるように黒っぽい色を塗った。
4.仕上げ塗り
塗り終わったときに、作者としては羽の塗り方に不満が残った。
蝶の中心部分の細かな毛の感じのリアリティーに比べ、羽が平面的すぎた。資料画像では画質が今ひとつで、よく分からない羽の模様の細部。本体との違和感。
後日、羽の黄色の部分に色を重ねて納得する。(ブログの写真では特に変化はないように見えるかもしれないが・・・。)
5.ニスを塗る
ニスを塗ってよりつややかな羽が出来上がる。
まとめ 上手な塗り方のコツ
今回は面相筆を使用して、フリーハンドで着色した。
はみ出したらやり直せばいい。でも、乾くと使えなくなるアクリル系の絵の具。
つい数分前に塗ったばかりの色も、パレット上で乾いてしまったりする。
一度できれいに塗りたい。コツは次の3つだ。
塗る順番:明るい色を先に塗る
明るい色から塗る方が美しく仕上がる。黄色や水色を先にはみ出すように塗っておく。
そして、暗い色で上から抑えるように塗る。
絵の具の濃度:水分は適量を保つ
特に黒い色の濃度は重要。下の明るい色が透けないように、水を少なめにすることが大切だ。しかし、濃すぎてもかすれてしまうので、ちょうど良い濃度をつかむことが肝心。
また、絵の具をパレットに出したまま置いておくと乾燥するので、常に良い濃度に保てるように水を少しずつ足す。児童や生徒には、水分を保てているかたまに声をかけると良いだろう。
筆の使い方:筆先の向きに気をつける
明るい色を抑えるように暗い色を塗るときは、筆を進行方向にひいてくるように動かす。筆先が最後についてくるようにするのがポイント。
いつも筆を引いてくるように塗るためには、作品の向きを変えながら塗る必要がある。作品を回すようにこまめに動かそう。
感想 「美しい」を創作の原動力に
いつかアゲハ蝶の美しさを描きたいと思っていた。今回の石は蝶の形ではなかったが、石をキャンバスとして、描いてみようと思い立った。
何かを美しいと思う気持ちは創作の原動力になる。美しいと思うものを沢山増やしていきたい。
アゲハは、子供の頃に大きくて見事な姿が突如目の前に現れて、立ちすくんだことがあった。それ以来、蝶の神秘的な美しさが憧れだ。
子供達にも色々な体験をする中で、様々な美しいものを発見してもらいたいものだ。