はじめに
「美」の表現には、さまざまな種類がある。絵画や彫刻などの視覚的な表現や、音楽や文学での表現など。
写真は、視覚的表現の1つ。
近年では技術の発達により、質の高い写真を撮影できる機材が身近になり、誰もが気軽に作品づくりに取り組めるようになった。
でも、実際に撮影するとして、何を撮ればいいのか。テーマを決めて撮影するのがよいといっても、どのように考えたらよいのだろうか。
今回は、写真のテーマの決め方について、具体例とともに解説します。
テーマを考えてみよう!
絵画や彫刻、音楽、文学。どのような表現でも、テーマを考えることは大切だ。まずは何を表現したいのかを自分で決める。写真も同じだ。
撮影したいテーマを決めることにより、自分が撮りたいものや、写真を通して伝えたいことが明確になっていく。
写真のテーマを決めるにあたっては、次のように考えてみるとよいだろう。
1.普段の生活の中から~愛犬の散歩中の写真~
家の中・散歩・買い物・通勤通学・趣味など、いつもの生活の中で、テーマを意識してみよう。
テーマは、感動したことや惹かれたこと、好きな物など、自分が心動かされるものの中に見いだすことができる。
中には、「喜怒哀楽」といわれるように、喜びもあれば、悲しみや怒りなどもあるだろう。
普段の生活の中で心動かされた瞬間を切りとる、風景写真。
夏、愛犬の散歩中に撮影した「まつぼっくり」「セミの抜け殻」「カボチャ」の3つのテーマを例として紹介する。
テーマ「まつぼっくり」
ふと見上げると、木々が美しかった。
これは、松。
え?なんだ、これは。
気になり、拡大して見てみる。
秋に落ちてくる・・・まつぼっくり?
数がすごいね。大豊作。
灼熱の太陽の下。秋まで日に焼けながら実がなっている状態なのか・・・。
松ぼっくりの固い皮。種を守るために、がんばった証。
テーマ「セミの抜け殻」
公園では、蝉が鳴いています。
地面には抜けた穴がぼこぼこ。固い地面のところなので感心します。頑張ったね。
それなのに、こんなに細い草花の枝で脱皮?大丈夫?
えーっ、それは葉っぱだよ。ちょっと切れて垂れ下がってる・・・。
みな、その道を選んだ運命を、疑うこともなく登ったんだね。
蝉、一斉に鳴いてます。
テーマ「カボチャ」
厳しい暑さが続いた2023年の夏。
サルスベリが、この強い日差しに咲き誇る。
毎年咲き、実るカボチャと今年も出会う。あざやかな黄色の花。
収穫に向けて実が育っていく。
でも、今年はダメだったようだ。
農家さんがあきらめて、刈り入れはあっという間。雨の後、わずか数日のこと・・・。
こんなに雨が降っているのに、間に合わなかった。
ニュースで作物の被害が報道されていた。日照りは災害に入らないということで、保証がないそうだ。ただ泣き寝入りだと述べられていた。
感動には、悲しみも苦しみもあり、それも生きること。生命の力を感じ、とらえた一瞬も、写真のテーマとなる。
2.目的をもって~観光地の写真~
趣味や好きなことがあって、外へ出かける。写真を撮るためにはとても有効なことだろう。
海、山、川といった自然の中。都会の街並み。観光スポット。日常にはない面白いものが沢山見られる。
見たい物は何なのか。それが決まっていれば、写真のテーマもバッチリ。
水面に富士山が映り込む「逆さ富士」を見ることができた日の1枚。
奈良の東大寺で見た仏像の頭部の展示。顔の立体感と表情に圧倒された。
奈良で鹿同士のけんかを見て、迫力の1枚!
撮影の際に注意したいこと
撮影禁止・進入禁止
いくら観光地でも、撮影禁止のものや場所がある。禁止事項は、絶対に守ること。
また、寺社仏閣は神聖な場所であることを忘れずに行動したいものです。
進入禁止というのは、危険がともなうことも多い。自分の命や、救助する人のことを考えて、立ち入らないことが重要。
人権への配慮
肖像権をはじめとした人権を守って撮影しよう。
カメラを向けられたことをきっかけに、トラブルになることもある。断りなく人を撮ることは、盗撮と思われかねないので気をつけたい。
また、民家にはプライバシーが映り込むことがある。
万が一映り込んでしまったときは、カットしたり加工したりすることも必要になるだろう。
おわりに
好きなもの、感動したことを写真に残したい。そのことが、写真を撮影する一人一人にとって、もっとも魅力的なテーマになるのではないでしょうか。私はそんな風に考えて撮ろうと思っています。