石という素材で作るからこそ面白い独特の表現を楽しみたい。
たとえば、トリックアート。
石に穴を開けたように見せたら面白そうじゃないかなと、思いつく。
石は硬くて、実際には機材がないと穴を開けられない。自然の石に穴が開いていたら不思議な感じがするかもしれない。
トリックアートの技法で作り、面白い写真を撮ってみよう!
ストーンアート第13回。制作手順を紹介。
「穴の開いた石」制作手順
厚みのある石、薄い石。タイプの違う形の2つ石を選んだ。
制作手順は、薄い石の方を使って説明する。
1.下描き
石に楕円を下描きする。あとから壁面部分を描き加えて、石の厚みを表すためだ。
2.着色
穴の向こう側を描く
穴が開いているってどういうことか? それは、穴の向こうにある物や景色、下に敷いた物などが見えるということだ。
だから作品を置く場所を決めるのが大事になる。この作品は、画用紙などの白い紙の上に置くことにした。
次に、その紙の色のような白を作る。白と言ってもさまざまな色味の違いがあるので、ほかの色の絵の具を少し混ぜ合わせて(混色して)作る方が良い。今回はスケッチブックの紙の色に近づけるため、茶色を少量混ぜた。
作った白色を、石の中央に塗る。
穴の壁面を描く
穴の壁面にあたる部分は、グラデーションの技法で光と影を描く。
グラデーションは明暗で描く。暗い色を作って、白を足して明るくしていく。
そして、光の当たらない部分に暗い色、光が当たる部分に明るい色を塗る。
光の当たる明るい場所というのは、光が来る方向に対して、垂直を向いている面のこと。穴の壁面は曲面なので、面の角度が少しずつ変化している。そのため、光の明るさも徐々に変化するようにグラデーションにするのである。
(グラデーションの技法については、こちらのページで紹介しています。)
【ストーンアート】海の生き物の立体感を表現~グラデーションの技法で~ - おうちでアート~作品と手順を紹介~
穴の中に影を描く
穴の中、つまり穴の向こう側に見える背景(白い紙)にあたる部分に影を描く。
本物の穴なら、光が遮られることで穴の中に影ができるはずである。
穴の形にそって影の暗い色を塗る。壁面から離れるほど影は薄れていくのでグラデーションで表す。
穴の壁面の色と、石本体の色に違いが出た。
仕上げとして、壁面の色に白を混ぜて明るくした色を作り、水で薄めて表面に塗る。全体の色を似せて、全ての面が同じ石のものであるように見せるためだ。
石の自然な感じを表現するために、ニスは塗らない。
仕上げ
穴の中(白い紙の色)の影など、グラデーションの調子を強めて仕上げる。
3.撮影
撮影の際は、石を置く場所や、写真に収める角度を考えるのが大事。
今回は、スケッチブックの上に石を置いて、穴の向こうにスケッチブックの紙が見えるかのように錯覚させるトリックアート。さらに、斜め上の角度から撮影することで、本当に穴が開いているように見えやすくなる。
まとめ
物体に穴が開いているように見せたいときは、穴の向こう側を描く。特定の色や柄の物が見えればよりリアリティーが増す。
作品の下に敷く台紙や布を用意して、その色や柄を石の穴の部分に模写するとよい。もしくは、自分が作った色で台紙を塗って、同じ色で穴も塗ればなじみやすいし、簡単にできる。
学校の授業などで実践するには、こうした工夫は一手間かかるが、時間的な余裕があれば行うことにしても良いだろう。あるいは早くできた人が取り組むなど。
たくさんの作品が集まれば、展示も面白くなることだろう。
また、今回のトリックアートは、誰でも簡単に制作できるところがポイント。グラデーションがあまり上手く描けなくても、穴の開いた石だと分かるような写真がきっと撮れるはず。写真自体を作品として発表してもいいのではないだろうか。自由研究の題材にもおすすめしたい。
感想
トリックアートの写真を撮って家族にLINEで送ったら、本当に穴を開けたと思われたらしく、痛快だった。石に穴を開けたんだ、斬新だねえ。・・・とのこと。
そんなわけないでしょ~! 機材もないし、部屋の中でどうやって?割れないの?と少しも疑われなかったのが面白い。視覚の強さだ。説得力があるんだね。
穴を開けるトリックアートは1つの技法だが、それを使って新しい表現もできるだろう。穴の中に何かが居たり、中から何かが出てきたり・・・。
作品を手に取ると分かる。穴が開いているように見えるけど、穴はない。くぼみすらない。
してやったり。トリックアート大成功!