はじめに
作品づくりに自然物を使うのは面白い。
偶然に生まれた形が、私たちのイメージを搔き立てる。
頭に浮かんだイメージをより美しく、素敵に表すテクニックと描き方の手順を紹介します。
ストーンアート第8回。
面白い形の石があったら、形を活かしつつアートを楽しんでみませんか。
グラデーションの技法で表す「クジラ」
ストーンアートは、石に直接絵を描くもの。キャンパスとなる石の形を見てから、モチーフ(素材)を想像してデザインする。
石を削ったり細工したりせずに表現するので、いびつな形の石を選ぶと、本物そっくりにはならない。それでも塗り方によって立体感をつけると、生き物らしい魅力を出すことができるのではないか。
グラデーションのテクニックを使い、自分のデザインを表現してみよう。
手順
1.石からモチーフを発想する
この度私が選んだ石には、クジラがいるように見えた。少々既成のクジラのデザインのような、つまり漫画やイラストなどどこかで見たことがあるような形だが、自分らしい作品にしたい。
2.資料を探す
石の形は本物とは違うが、ネットでクジラの写真を探す。腹の凹凸や、目の周りがどうなっているか理解するためだ。
写真と見比べると、石に形が浮き上がって見えるのはクジラの胴体部分のみ。特徴的なヒレや尾などは石の中に見当たらないので、どこに描くとよいか、観察しながら考えた。
3.下描き
上から、または横から見るとクジラの形だなと思える。しかし、ヒレや腹の部分はないようなので、描き足す必要がある。
今回は石の形をそのまま活かして、ヒレの形とお腹の方のみを下描きした。
4.着色:下地塗り
・赤と緑で暗い灰色を多めに作る。3原色(赤、青、黄)を混ぜて作っても良い。
・暗い灰色を一部取り分けて白を混ぜ、やや明るくした灰色でクジラ全体を下地塗り。
・腹の部分には、もっと白を多く混ぜた灰色で下地塗りをした。
灰色を作るなら黒と白だけあればよいのでは?と思う方も多いかもしれない。でも、反対同士の色や3原色(赤、青、黄)などを上手に使って、色味の感じられる灰色を作ると、より美しい。
※白、黒、灰色は、色味のない色(無彩色)と呼ばれている。
5.着色:グラデーション
多めに作っておいた暗い灰色に白を混ぜて、グラデーションになるよう塗っていく。
頭部の真ん中が明るく、腹に近い方は暗くなるように。
グラデーションの詳しい方法については後述します。
グラデーション後に目を描き込む。
腹部のひだも、グラデーションで描く。
6.仕上げ塗り
目の光や、クジラのヒレの白いところなど、ハイライト(一番光っているところ)を塗って完成。
7.ニス塗り
塗った部分にニスを塗ってツヤを出す。濡れた感じがでることと、傷などからの保護の役目もある。
これで完成!
グラデーションの方法について
グラデーションとは、1つの絵の中で色や形が、徐々に変化していくこと。
その中でも今回は色の変化の方法を説明する。
グラデーション(色の変化)には3種類ある
・明度のグラデーション・・・明るさが徐々に変化する
・彩度のグラデーション・・・灰色をまぜ、徐々に濁っていく
・色相のグラデーション・・・黄色から赤のように色味(色相)が変わっていく。
立体感を出すためには、「明度のグラデーション」を利用する。
明度のグラデーションの色の作り方
(1)グラデーションの始まりの色と終わりの色を用意する。
今回のクジラの場合、赤と緑を混ぜて灰色を作った。これが始まりの一番暗い色。
終わりの色は、白に灰色を少し混ぜた色とする。一番明るい色。
(2)明るい色から暗い色を少しずつ混ぜることで色に変化をつけていく。
(3)境目が見えないように上手くぼかすことができたら、立体感につながる。
実際に着色してみた。
上の写真は、左の暗い灰色に白を少しずつ混ぜていったところ。
画用紙に着色してみた。上手くぼかすためには、筆の方向をそろえて塗るようにすることがポイント。元の色と次の色を混ぜながら、間の色を塗っていくと良い。
まとめ
今回のグラデーション表現のため、灰色と白を用意した。クジラの背中の上の方に行くにつれ白を入れて明るくしていった。
また、お腹のひだの部分も幅が小さくて大変だが、一つ一つグラデーションで立体感を出している。
形は石そのままを活かし、生命感を出すことができた。グラデーションは慣れればマスターしやすい。平面の絵画などにも使う場面が多くあるので、使えるようになるとますます描くことが楽しくなってくるだろう。