はじめに
ストーンアートは、自然の石を観察すると、その色や形から制作したいモチーフ(素材)が思い浮かぶこともある。
しかし、頭に浮かばないときどうすればいいのだろう。
動物でも植物でも好きな物を作っていいって、案外難しい。何か参考にできるものはないだろうか。
そこで、”自分の好きな分野から自分だけのモチーフを見つける方法“を考えた。
ストーンアート第9回。
今回はモチーフを分野ごとにまとめた図表を作ってみました。
発想を広げるためにモチーフについて考えよう
モチーフの分野表を作る~ワークシートの制作~
世の中の作品に動植物をモチーフにしたものは多い。とはいえ、具体的にはどんなものがあるか、すぐには浮かばない。
はじめはモチーフになりそうな分野(動物、植物など)を複数あげ、さらに細かな内容を発想したり調べたりして書き込み、表を完成させてみよう。
ワークシートの制作例
好きな分野を選ぶ
好きな分野の中にこそ、描きたいものがあるのではないだろうか。
スポーツが好きな人は、ボールやラケットなどの道具、シューズやキャップなどの身につける物などが浮かびやすいだろう。オシャレが好きな人は、靴やカバン、アクセサリー、洋服など。
子供達の生活に合わせ、思い出しやすいようにという視点で分けてみた。また、表の中にはないとしても、これだけ見れば自分の好きな物が思い出せるのではないでしょうか。
調べてモチーフを決める~ワークシートに記入~
表に書き込んでいる内に、自分が最も詳しかったり好きだと思えたりする分野が見つかる。そうしたら、ネットや書物でもっと調べよう。
同じ分野の中にもたくさんの種類があるかもしれない。今回制作したグローブも、各種スポーツメーカーの商品があり、色もデザインもさまざまだ。いつでも参考にできるように、いいと思った部分をスケッチしておいてもいいですね。
ワークシートを作るときに余白を多めに設けておけば、言葉もスケッチもメモしやすい。
また、調べているうちに、もっと他のモチーフを選びたくなるかもしれない。興味・関心は広がっていく。それも素晴らしいことですね。
書き込み例(調べた後)
形を調べてとらえる
自分らしい作品にするためには、実物をよく観察しよう。
自分の記憶だけを頼りにして描いた形は、どこかで見たようなデザインであることが多い。一般的な形や、流行している形だ。これらの形は皆が取り入れやすいので、似てしまうことがある。やっぱり自分らしい作品を作りたいものです。
ネットや図鑑などの資料を用意して実物を確認したうえで、下描きをすると良い。いろいろな角度から見ることの出来る資料があれば便利。
スケッチしてみることがお勧めです。
野球のグローブを作ろう
モチーフを決める
私はスポーツ観戦が好きだ。野球は特に南海ホークスで四番キャッチャーだった野村克也さんのファンだった。
野球といえばユニフォーム、野球帽、スパイク、バット、グローブなどがモチーフとして思い浮かぶ。
最近では大リーグの大谷翔平選手が、日本の小学校に野球のグローブをプレゼントすることが話題になっていたなあ。なんて素晴らしい!
そこで、軟式のグローブを作ってみようと思う。
さあ、石を見つけよう。
制作手順
1 石を選ぶ
グローブを作ると決めてから石を探してみた。ちょっと手みたいな形の石を見つけた。
製作前に、石は良く洗ってしっかり乾かします。
2 資料を探す
ネットで「グローブ 写真」と検索した。軟式と公式の野球グローブがある。軟式グローブにしぼって色々な角度のものを見る。
石の形に合わせて下描きする。
3 下描き
はじめはスケッチブック等に下描きをする。石の形の中にモチーフをどのように描き込んでいくとよいか、当たりをつけられる。
子どもや生徒には、石の形を上手に活かして描けるように、下描きの段階でアドバイスがあれば伝えたい。
石に直接下描きするときは、固有色(対象がもつ本来の色。グローブなら茶色など)を水で薄めて、輪郭を描く。
今回の作品では石が小さいので、グラブの紐など細かなところは省略したり、単純にしたりした。
4 下地塗り
固有色で中を塗る。他の色の部分は、その固有色を塗る。
5 影を描く
影には大きく2種類ある。凹凸によって光が遮られて出来る影と、形の形状からできる明暗を、それぞれ塗り重ねる。
6 光を描く
光が反射している部分に、明るい色を入れる。特に明るい部分の光を描くことで、皮のツヤも表せる。
7 ニスを塗る
ニスを塗って完成。
まとめ
発想することは難しい。「好きな物で良いから作ってみよう」と言うのが、思いつかなくて一番大変だという人はいると思う。でも、もし自分らしさのあるモチーフを1つ選ぶことが出来たら、いろいろな作品に活用できる。
例えば鉄道が好きだったら、ポスターや彫刻、粘土、イラストなどの作品のモチーフに電車を使うかもしれない。好きだからこそ、丁寧に詳しく作りあげることができるだろう。モチーフが同じでも、それぞれの制作の勉強になるはずだ。
自分の興味関心がどんな物や事にあるのかを見つけることは、図工や美術の授業はもちろんのこと、総合的な学習の時間をはじめ、オリジナリティが求められる学校の調べ学習などにも役立つことだろう。
今回の表のようなワークシートに記入する取り組みは、なるべく小学校から中学校一年生くらいまでの間に一度やっておくと、その後の発想の足がかりになるのではないかと思います。
感想
今回の作品例はグローブ。モチーフを選んでから石を探すというやり方だった。大切な物を描くことが出来る石を探す。校外学習や移動教室に行く前に決めていけば、河原で石を探すことが楽しめるだろう。
そして、自然の中で石の多くの色や形を見て、思いも寄らなかったものを発想するかもしれない。形を見て驚き、表現したいモチーフが変わることもあるだろう。興味関心の幅は広がっていく。自分で探し、観察することは、想像する力をアップさせるのにもってこいだ。