ストーンアートは、何かのモチーフ(素材)を想像して石にデザインする。
でも、石がこちらに語りかけてくるかのように、自然とモチーフを思いつくことがある。
色を塗らなくても、まさにこれは犬の頭。こっちは象の顔。
そんな2つの石と出会ったので、迷わず描く。
作品のタイトルは「ちょいワル犬のブルース」と「私は象だ」。
ストーンアート第12回。
キャラクターや漫画の技法を利用した描き方と、制作手順を紹介します。
「ちょいワル犬のブルース」制作手順
1つ目の作品に使ったのは、味のあるゆがみをもった石。
1.石からモチーフを発想する
この石は犬。どこから見てもそんな形をしている。どんな犬なのか。
顔のゆがみが、まるでニヤリとしているような表情に感じる。
2.資料を探す
犬は犬でも、犬種はなんだろう。ネットで犬の写真をたくさん検索してみる。
この石に似ている犬はいないかな?こんな探し方をすることになるとは思いもよらない。ちょい悪のキザな顔の似合う犬は?
種類は分からないが、イメージに合う顔つきの犬の写真があった。形はちょっと違うかもしれないが、この犬種を参考にさせてもらう。
3.下地塗り
下地の色は、赤みがかった茶色系。目と鼻以外のところを塗ったら、もう犬の顔のように見えてくる。
4.着色
目に色を塗る。
目つきを工夫して、表情を作ろう。三白眼で上目遣いに。口のゆがみには、漫画のようなデフォルメが合うと思った。味のある顔になったかな。
鼻の周りの小さな穴は絵の具で埋めてしまわないように残す。ひげあとのようだ。
こちらと視線が合うように、目を描き込んだ。
角度を変えて撮影。
少し離れた位置からも撮影。
裏面には着色せず、石の色や手触りそのものを残した。
5.ニスを塗る
絵の具の部分にニスを塗って完成。
「私は象だ」制作手順
1.石からモチーフを発想する
この石は、耳のような形がまさに象のもの。穏やかだが気高い象の顔が浮かぶ。
しかし、耳があるのは左側のみなので、どうするか。
2.資料を探す
象の写真を見て、耳はもちろんだが、鼻を細かく描いてみたくなった。
固い皮膚に守られた体。曲げ伸ばし、伸縮の必要から鼻には無数に刻まれたしわがある。美しく描きたい。
3.下描き
色は象の固有色(対象物が本来もっている色)の灰色で下描きする。目元、鼻、牙を描いていく。
4.下地塗り
象の肌の色は、自然の石の色とそんなにかけ離れているわけではない。そのため、水を多く使い、薄めに下地塗りをした。
5.着色
しわを美しく描くため、面相筆(人物の顔の細部を描く筆)の細い線で描く。目にも色を塗る。野生の気高さを表すため、あまり表情は作らないようにした。
ポイントは、鼻が短いことを感じさせないよう、しわに焦点がいくように描き込んだところ。
6.ニスを塗らない
これまでブログで紹介してきた他のストーンアートの作品では、傷などから保護したり、ツヤを出したりするためにニスを塗っていた。
今回は、象の皮膚感を残すために、ニスを塗らずに完成。
「私は象だ」完成。
右側の耳の凹凸はなかったので、平面に影を描いて立体感を出した。
まとめ
今回も、形は石そのままを活かして作った。
犬は、目の表情を作ることで「ちょいワル」のイメージをだしてみた。目の形や瞳の輝きなど、キャラクターや漫画の技法も使ったテクニック。描き方の何がよくて何が悪いということはない。ストーンアートでできる表現はまだまだありそう。
一方、象の方は野生の雰囲気を残すため、ニスを塗らずに完成させた。表情もできるだけ写実だ。
違う2点の作品だが、今回はどちらも石の方からの指示・・・つまり、石を見て自然に思いついたモチーフ。オリジナリティのある作品に仕上がった。
感想
面白い形の石を見つけ、自然の偶然を楽しむのが、ストーンアートの基本だなと改めて感じた。一つも同じ物がないキャンバス。それが石。
作るほどに、さまざまなアイディアを試してみたくなる。形と色を観察して、いつまでも楽しめる素材だ。
ブルースも象も、なかなかかっこいいキャラに描けたので満足。